ACSP 一般社団法人コンピュータ教育振興協会

CADエンジニアの先輩に聞く

vol.10 玉造紀子さん

2020.7.17

シングルマザーとして3人のお子さんを育てながら土木コンサルタント会社に勤務する玉造紀子さん。CADオペレータの玉造さんは、お子さんの通学路のグリーンベルト*の図面も作成しました。そんな玉造さんに仕事やCADについてお話を伺いました。
*歩道と車道の区別のない道路の路側帯に、境界を標示するために引かれた区画線


玉造紀子さん
玉造紀子さん

―お忙しいところお時間をいただき、ありがとうございます。早速ですが、現在お勤めの会社について教えてください。

玉造さん:勤めている会社は土木コンサルタント会社で、主に神奈川、横浜、東京、川崎の自治体に向けて道路、河川、下水道の設計を行っています。契約によりますが、まずは現状を調査し、自治体の基準に副って工事を設計、図面を描き、図面、工法と工期に関する数量を報告書にまとめたものを納品します。

―そこでどのような仕事を担当されているのでしょう。

玉造さん:私は主に下水道を取り扱っている部署でCADオペレータとして2次元図面を作成しています。下水道の耐久・耐震化に伴う工事の設計です。最近は、点字ブロックの配置の設計など道路の補修や工事の設計も多く扱っています。
また下水管の入れ替えが必要な工事では、掘った道路の現状復帰のための白線やセンターラインの図面を描くこともあります。

―それではご自身が描かれた道路を通ることもあるのですか?

玉造さん:はい、今も事務所のそばで行っている工事は弊社で設計したものなので頻繁に通ります。また新たに通学路に設置するグリーンベルトの範囲設計の図面を作成したことがあるのですが、たまたま私の子供が通う学区域で「これはお母さんが描いたのよ」と子供に教えました。

―お子さんに自慢できますね!どのようなきっかけでCADの仕事に就かれたのですか?

玉造さん:独身時代は塾の講師を、また子供が生まれてからもパートをしていたのですが、14年程前に離婚をして、一人で子供を育てていくために手に職をつけたいと考え職業訓練校に相談に行きました。そこには簿記、その他様々なコースがあったのですが、CAD製図課コースは研修期間が一番長くほかよりも専門性が高いだろうと考え、また絵を描くことや図形の展開図が好きだったのでCADに興味をもち、生活のために一番良いのがCADだと思い選びました。
研修後に職業訓練校から紹介されて今の会社に入社し、現在に至ります。

―職業訓練校で初めてCADを知ったとのことですが、使ってみていかがでしたか?

玉造さん:やってみて面白かったです。最初は丸とか三角を描くのですが、アンパンマンを描いて持ち帰り、子供が塗り絵をして遊んで。それがすごく楽しくて、仕事でも使うけれど、こういうこともできるのだと。組み合わせて絵が描けることが楽しかったですね。

―仕事としてのCADも面白いですか?

玉造さん:はい、与えられた図面をどうやったら早く描けるのかを考えるのが楽しいですね。またCADは奥が深くて、他社が作成した図面にこれまで知らなかった表現方法(描き方)を見つけることがあります。まだまだ新しいことや便利な方法があるようで、知りたいなと思い楽しいです。

―CADを仕事にして良かったと思われますか?

玉造さん:私と同じ一人親の中には体力が必要な仕事をしていたり、パートを掛け持ちしている友達もいます。私は正社員として就職ができ、年を重ねても続けられる仕事で良かったと思っています。また専門的なことができるというのは転職でも強みになると思います。

―楽しいと思える仕事で、しかも長く続けられるのは素晴らしいですね。今後何かやってみたいことがありましたら教えてください。

玉造さん:子供たちも大きくなってきたので、次のステップへ進むことを考えています。知り合いの方から中小企業ではCADができた上に、さらに別のスキルをもつのも良いのでは、というアドバイスをもらったので、経理の勉強を始めています。また、人にものを教えることが好きなので、CADを教える側の仕事についても興味があり、検討しています。

―最後にCAD利用技術者試験についてお聞かせください。

玉造さん:職業訓練校で2次元CAD利用技術者試験2級を目標とするように言われ、卒業してすぐに取得しました。
また2018年には、自分のCADの能力を資格という目に見える形にしたいと考えて2次元CAD利用技術者試験1級機械を取得しました。現在の仕事の内容に合うのはトレースなのですが、機械の方が難しそうだと思い、どうせ取るなら難しい方をと思い挑戦しました。会社も資格取得を奨励しており、受験料の負担、資格手当の支給があり、試験前日は終日勉強することができました。

 

3人のお子さんを育てながら、そしてCADを楽しみながら仕事をされている玉造さん。しっかりと将来を見据えて計画し、それを実現されていて素敵な方でした。また改めて、仕事をしていく上でCADは強い味方になると思いました。お忙しいところご協力ありがとうございました。